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今昔物語集 今昔物語集

巻9第15話 河南元大宝死報告張叡冊夢語 第十五

今昔、河南に、元大宝と云ふ人有けり。貞観の間に、大理の丞とて有けり。此の人、心に因果を信ぜず。亦、同僚に、張の叡冊と云ふ人有けり。互に友として、契り深し。

大宝、常に、叡冊に語て云く、「我等二人が中に、若し、先きに死なむ者は、将来の果報の善悪を必ず示し知らしめよ」と契る。

而る間、大宝、貞観十一年と云ふ年、車にして1)、洛陽に行く間、病を受けて、忽に死ぬ。叡冊は、京師に有て、大宝が死せる事を未だ知らず。

而る間、一夜、叡冊、夢に大宝来て、告て云く、「我れ、既に死たり。生たりし時、善悪の報有る事を信ぜざりき。今、死て後、定て善悪の報有けりと云事を知ぬ。此の故に、我れ来て、君に知らしむ。君、専に福業を修すべし」と。

叡冊、夢の内に其の事を委く問ふに、大宝、答て云く、「冥途の果報の事、極て固くして、具に宣ぶべからず。只、君に『定て報有り』と云ふ事を知らしむ許也」と云ふと見て、夢覚ぬ。

其の後、叡冊、同僚に向て、此の夢の事を語ると云へども、実否を知り難きに依て、次の日行て、大宝が事を問ふに、大宝、既に死たる由を知ぬ。

然れば、其の夢の告の、実に令□□□2)。「生たりし時、契り深かりし中なれば、死て後も忘れずして、此の如く示す。志し、哀れ也」と云てなむ、叡冊、大宝を恋ひ悲びけりとなむ、語り伝へたるとや。

1)
底本頭注「車ニシテ一本車ニ乗ジテニ作ル」
2)
「実に令□□」は鈴鹿本「家ニ令(二字虫損)メケリ」。
text/k_konjaku/k_konjaku9-15.txt · 最終更新: 2017/02/01 19:06 by Satoshi Nakagawa
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