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今昔物語集

巻7第13話 恵表比丘無量義経渡震旦語 第十三

今昔、震旦の□□代1)に、武当山と云ふ所に、恵表比丘と云ふ比丘、住けり。

懃(ねんごろ)に仏の道を求めむが為に、建元三年と云ふ年、嶺南に至て、広州の朝亭寺にして、中天竺より渡れる沙門、曇摩伽陀耶舎に値て、「無量義経を伝へむ」と思ふ心を至して、此れを請(もとむ)るに、纔に一本を得たり。即ち、武当山に、此の経を持至て、此の経を受持す。

其の後、永明三年と云ふ年の九月の十八日に、恵表、此の経を頂て、山を出でて、世に弘めむとす。山の中に宿せるに、初夜の程に、忽に一の天人、恵表の所に来れり。百千の天衆を随て眷属として、此の無量義経、及び恵表比丘を供養す。恵表、天に問て云く、「此れ、誰の天の、何の故有て来れるぞ」と。天、答て云く、「我等は、此れ武当山に有りし青雀也。集まり聚て、比丘の無量義経を誦し給ひしを聞しに依て、命終して、忉利天に生ぜり。我等、『其の恩を報ぜむ』と思ふに依て、来て、経及び師を供養する也。我等が本身は、彼の山の西南の陽に有り。一所に聚て、皆身を捨たり」と。此の事を語り畢て、忽に失ぬ。

恵表、此の事を聞て、使を彼の山に遣て見しむるに、多の青雀、教ふる所に死て皆有り。其の後、此の経を世に弘む。

而る間、一人の人有て、此れを信ぜずして云く、「此の経、何ぞ必ず法花経を序すべき」。此の如き思ふ程に、其の人、夢に一の神有り。長大一丈余也。金の甲を帯し、利釼を持てり。甚だ怖るべし。此の不信の人を呵して云く、「汝ぢ、若し此の経を信ぜずば、当に其の頭頸を斬るべし。此の経は、此れ法花の序分也。一度び耳に触つる人は、必ず菩提心を発して、退2)する事無し」と。

夢覚て後、其の人、過を悔て謝しけりとなむ、語り伝へたるとや。

1)
底本頭注「代ノ上斉ノトアルベシ」
2)
底本頭注「退ノ下一本転トアリ」
text/k_konjaku/k_konjaku7-13.txt · 最終更新: 2016/12/11 12:42 by Satoshi Nakagawa
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