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今昔物語集

巻4第33話 天竺長者婆羅門牛突語 第卅三

今昔、天竺に長者と婆羅門、牛突を合す。各金千両を懸たり。日を定めて、各牛を出して、長者・婆羅門、共に見る。亦、余の人の来て見るも数(あまた)有り。

長者の云く、「我が牛、極て異様也。角・面・頸・尻を見るに、皆力無(ちからな)の相有り」と。牛、長者の言を聞て、恥て、「我れは必ず負なむとす」と思ひ立り。即ち、出し合せて、突する時に、長者の牛、既に負け伏しぬ。然れば、長者、千両の金を婆羅門に渡しつ。

長者、家に還て、牛に向て、恨て云く、「汝が今日負ぬるに依て、我れ、千両の金を取られぬ。更に憑む甲斐無し。極て情け無き事也」と。牛、答て云く、「我が今日負ぬる事は、君の我を謗り給ひつるに依て、忽に魂失せて、力無に成にき。然れば、負たる也。若し、金を取り還さむと思さば、今一度合せて突べし。さて、我れを讃め給へ」と。

長者、牛の言を聞て、今一度合はすべき由を乞請く。此の度は、「三千両の金を懸て突せむ」と云ふ。婆羅門は、前に勝たるを憑て、「此の度は、三千両を懸む」と云ふ。長者も同く請けつ。

其の後、牛を出し合す。長者、牛の教に随て、我が牛を讃る事限無し。牛、既に突き合ふに、婆羅門の牛負ぬれば、婆羅門、三千両の金を長者に渡しつ。然れば、万の事讃るに随て、単花開て、功徳を得る也となむ、語り伝へたるとや。

text/k_konjaku/k_konjaku4-33.txt · 最終更新: 2016/08/21 17:40 by Satoshi Nakagawa
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