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今昔物語集

巻4第30話 天竺婆羅門貫死人頭売語 第三十

今昔、天竺に一人の婆羅門有けり。多の死人の古き頭を貫て、王城に入て、音を高くして、叫て云く、「我れ、死人の古き頭を貫き集て持たり。人有て、我が持たる頭を買ふべし」と。

此の如く叫ぶと云へども、一人として買人有らむや。婆羅門、頭を売得ずして悲むを見る人、多く集て、罵り咲ふこと限無し。

其の時に、一人の智(さとり)有る人出来て、此の頭を買取る。婆羅門は耳の穴に緒を通して持たり。此の買ふ人は、耳の穴に通さずして持還る。其の時に、婆羅門、買ふ人に問て云く、「何の故に、耳の穴に緒を通さざるぞ」と。答て云く、「法花経を聞ける人の耳の穴に、緒を貫かざる也」と云て、買取て持去ぬ。

其の後、塔を起てて、此の多の頭を置て、供養しけり。其の時に、天人下て、其の塔を礼拝して、去にけり。

婆羅門の願を満てむが為に、用無しと云へども、頭を買取て、塔を起てて、頭を籠めて、供養するを、天人も歓喜して、降て礼拝する也けりとなむ、語り伝へたるとや。

text/k_konjaku/k_konjaku4-30.txt · 最終更新: 2016/08/18 18:30 by Satoshi Nakagawa
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