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今昔物語集

巻28第43話 傅大納言得烏帽子侍語 第四十三

今昔、傅大納言と云ふ人御しき。名をば道綱となむ云し。家は一条になむ有し。其の家に、世の□者にて、者可咲く云て、人咲はする侍有けり。字をば内藤とぞ云ひける。

其れが、其の家にて夜る寝たりける程に、烏帽子を鼠の咋(くひ)て持行て、散々に咋ひ損たりければ、取替の烏帽子も無くて、烏帽子も為で、宿直(とのゐ)壺屋に袖を被(かづき)て籠居たりければ、主の大納言、此れを聞給ひて、「糸惜き事かな」とて、我が烏帽子を、「此れ取せよ」とて、給はせたりければ、内藤、其の烏帽子を給はりて、其れをして壺屋より出て、異侍共に向て云ける様、「主達よ、此れ見よ。寺冠・社冠の得てせむやは。一の大納言の御旧烏帽子をこそは給はりてせめ」とて、頸を持立て、したり顔に袖を打合せて居たりけるを見て、人、皆咲ひけり。

世には、墓無き事に付て、此く物可咲く云ふ者(も)の有なりけり。大納言も此れを聞て、咲ひ給ひけりとなむ語り伝へたるとや。

text/k_konjaku/k_konjaku28-43.txt · 最終更新: 2015/02/26 14:14 by Satoshi Nakagawa
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