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今昔物語集

巻28第19話 比叡山横川僧酔茸誦経語 第十九

今昔、比叡の山の横川に住ける僧有けり。

秋比、房の法師、山に行て、木伐(こり)けるに、平茸の有けるを取て持来たりけり。僧共、此れを見て、「此れは平茸には非ず」など云ふ人も有けれども、亦、人有て、「此れは正しき平茸也。」と云ければ、汁物にして、栢(かや)の油の有けるを入れて、房主、吉く食てけり。

其の後、暫許有て、頭を立て病む。物を突迷(つきまど)ふ事限無し。術無くて、法服を取出て、横川の中堂に誦経に行ぬ。

而るに、□□と云ふ僧を以て導師として申し上さす。導師、祈り持行て、畢に教化に云く、「一乗の峰には住給へども、六根五内の□□の位を習ひ給はざりければ、舌の所に耳を用る間、身の病と成り給ふ也けり。鷲の山に坐ましあはむ。をりを尋ねつつも、登り給ひなまし。知らぬ茸と思すべらに、独り迷ひ給ふ也けり。廻向大菩薩」と云ければ、次第取る僧共、腹を切てぞ咲ひ喤ける。

僧は死許迷て、落居にけりとなむ、語り伝へたるとや。

text/k_konjaku/k_konjaku28-19.txt · 最終更新: 2015/02/14 03:32 by Satoshi Nakagawa
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