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今昔物語集

巻27第42話 左京属邦利延値迷神語 第四十二

今昔、三条の院の天皇の御時に、岩清水の行幸有けるに、左京の属邦の利延と云ふ者、供奉して仕たりけるに、九条にて留まるべかりけるを、何(いか)に思けるにか、長岳の寺戸と云ふ所まで行にけり。

其を行ける程に、人共有て、「此の辺には、迷(まど)はし神有なるぞかし」と云つつ渡ける程に、利延も、「然か聞くぞ」など云て行けるに、日も漸く下れば、「今は山崎の渡には行着ぬべきに、怪く長岳の辺を過て、乙訓の川の辺に行く」と思へば、亦、寺戸の岸を登る。寺戸を過て行き持行く程に、「乙訓の川に来て渡る」と思へば、亦、過にし桂川を渡る。

漸く日も暮方に成ぬ。前後を見れども、人一人も見えず成ぬ。多く次(つづ)き行つる人も、皆見えず。

而る間、夜に成ぬれば、寺戸の西の方なる板屋堂の檐に下居て、夜を明して、朝(つとめて)思へば、「我れは左京の官人也。早う九条にて留るべかりけるに、此まで来つらむ、極まりて由無し。其れに、同所に絡返し廻行けるは、九条の程より迷はし神の託(つき)て、将狂(ゐてくる)はして行かせけるなめり」と思て、其れよりなむ、西の京の家に返り来たりける。

然れば、迷はし神に値ぬるは、希有の事也。此く心をも□□1)かし、道をも違へて謀る也。狐などの為るにや有らむ。此れは利延が語りし也。

希有の事なれば、此く語り伝へたるとや。

1)
底本頭注「心ヲモノ下一本迷ハノ二字アリ」
text/k_konjaku/k_konjaku27-42.txt · 最終更新: 2015/02/01 03:44 by Satoshi Nakagawa
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