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text:k_konjaku:k_konjaku24-44

今昔物語集

巻24第44話 安陪仲麿於唐読和歌語 第四十四

今昔、安陪仲麿1)と云ふ人有けり。遣唐使として物を習はしめむが為に、彼の国に渡けり。

数(あまた)の年を経て、否(え)返り来たらざりけるに、亦彼の国より、□□と云ふ人、遣唐使として行たりけるが、返り来けるに、「伴なひて返りなむ」とて、明州と云ふ所の海の辺にて、彼の国の人、餞(はなむけ)しけるに、夜に成て、月の極く明かりけるを見て、墓無き事に付ても、此の国の事、思ひ出られつつ、恋く悲しく思ひければ、此の国の方を詠(なが)めて、此なむ読ける。

  あまのはらふりさけみればかすがなるみかさの山にいでしつきかも

と云てなむ泣ける。

此れは、仲丸、此の国に返て語けるを聞て語り伝へたるとや。

1)
阿倍仲麻呂
text/k_konjaku/k_konjaku24-44.txt · 最終更新: 2014/10/01 18:01 by Satoshi Nakagawa