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今昔物語集

巻24第41話 一条院失給後上東門院読和歌語 第四十一

今昔、一条院失させ給て後、後一条院の幼く御座ける時に、瞿麦(なでしこ)の花の有けるを、何心もましまさず取らせ給たりけるを、母后上東門院見給て、此なむ読給ひける。

  みるままにつゆぞこぼるるおくれにしこころもしらぬなでしこのはな

と。此れを聞く人、皆泣けり。

亦、一条院の未だ位に御座ける時、皇后失せ給ひけるに、其の後、御帳の紐に結び付けられたる文有り。人、此れを見付たるに、内にも御覧(ごらんぜ)させよがほにて有ければ、御覧ぜさせけるに、和歌三首を書き付けられたり。

  よもすがらちぎりしことをわすれずばこひむなみだの色ぞゆかしき

  しる人もなきわかれぢにいまはとてこころぼそくもいそぎたつかな

と。天皇、此れを御覧じて、限り無悲ませ給ひけり。此れを聞く世の人も、泣かぬは無かりけりとなむ語り伝へたるとや。

text/k_konjaku/k_konjaku24-41.txt · 最終更新: 2014/09/28 18:26 by Satoshi Nakagawa
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