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今昔物語集

巻20第29話 河内国人殺馬得現報語 第廿九

今昔、河内の国□□郡に住む人有けり。名をば石別と云けり。瓜を造て、此れを売て、世を過しけり。

然れば、馬に瓜を負せて、売らむが為に行かむとして、瓜を負するに、馬の負ふべき力に過て、此れを負せたり。馬、此れを負て行くに堪へねば、歩まずして立てり。石別、此れを見て、大きに嗔て、馬を打て、猶重き荷を負するに、馬、二の目より涙を流して、悲ぶ気色有りと云へども、石別、哀びの心無きが故に、追ひ打て、行て瓜を売り畢ぬれば、嗔の心止まずして、其の馬を殺しつ。

此の如くして、馬を殺す事、既に度々に成ぬ。其の後、石別、我が家にして、釜に湯を沸すに、石別、其の所に行て、釜の辺に至るに、石別が二の眼、忽に抜て釜に入て煮ゆ。此れを歎き悲ぶと云へども、更に力無し。

「此れ偏に、度々馬を殺せる咎に依て、現報を感ぜる」とぞ、皆人云ひ謗ける。

此れを思ふに、畜生也と云へども、皆我が前の世の父母也。殺生は尤も止むべし。現報得たる事、此の如し。此れを以て、後世の苦をば思ひ遣るべしとなむ、語り伝へたるとや。

text/k_konjaku/k_konjaku20-29.txt · 最終更新: 2016/03/15 23:17 by Satoshi Nakagawa
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