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今昔物語集

巻19第41話 参清水女子落入前谷不死語 第四十一

今昔、何此の事にか有けむ。清水に参たりける女の、幼き子を抱て、御堂の前の谷を臨(のぞき)立けるが、何しけるにか有けむ、児を取落して、谷に落入れてけり。

遥に振落さるるを見て、為べき様も無くて、御堂の方に向て手を摺て、「観音助け給へ」となむ迷ける。

「今は無き者」と思ひけれども、「有様をも見む」と思て、迷ひ下て見ければ、観音の「糸惜し」と思食けるにこそは。露疵も無くて、谷の底の木の葉の多く落ち積れる上へに落懸りてなむ臥たりける。母、喜び乍ら、抱き取て、弥よ観音を泣々く礼拝し奉けり。

此れを見る人、皆奇異がりて、喤けりとなむ語り伝へたるとや。

text/k_konjaku/k_konjaku19-41.txt · 最終更新: 2016/02/27 21:50 by Satoshi Nakagawa
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