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今昔物語集

巻16第26話 盗人負箭依観音助不当存命語 第廿六

今昔、播磨国赤穂の郡に一党の盗人有けり。往反の人の物を奪ひ取り、国を廻て人の家に入て、財を盗み人を殺す。然れば、国の人、皆此れを歎て、一国挙て心を合せ力を加へて、此の盗人共を皆捕つ。或は不日に頸切り手足を折り、或は生け乍ら獄に禁ず。

其の中に、一人の盗人有り。童にして、年僅に廿余也。此れ、此の中に勝たる者也ければ、罪多くして、縄を以て四の支を機物(はたもの)に張り付て、弓を以て射しむるに、可□□くも非ぬに□れぬ。

射る者、「此れ不慮の事」と思て、亦射るに□れぬ。此の如く、三度□□ぬれば、人々、此れを見て、恐れ怖(おぢ)て、盗人に問て云く、「汝ぢ、何なる故に此く有るぞ。身に何なる勤か有る」と。盗人の童、答て云く、「我れ、更に指(させ)る勤無し。只、幼少の時より、法花経の第八巻の普門品を読奉れり。月毎の十八日に精進にして観音を念じ奉るに、昨日の夜の夢に僧来て、告て宣はく、『汝ぢ、吉く慎て、観音を念じ奉れ。汝ぢ俄に災1)に値はむとす。然るに、我れ、汝に代て弓箭を受くべし』と。夢覚て後、逃げ遁る方無して、此の難に値ふ。定て知ぬ、夢の告げの如くに、観音の我を助け給ふなめり」と云て、大きに音を叫て泣く事限無し。

其□□□□□見聞く人、皆涙を流して、観音の霊験を貴むで、此の盗人の□□を□□其の□□。此の童、国の追捕使に仕へて、名を「たたす丸」と云けり。

盗人なれども、誠□□2)れば、観音も此くぞ利益し給けるとなむ、語り伝へたるとや。

1)
底本異体字「灾」
2)
底本頭注「誠ノ下一本ア字アリ。又一本ノ心アノ三字アリ」
text/k_konjaku/k_konjaku16-26.txt · 最終更新: 2015/12/15 14:48 by Satoshi Nakagawa
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