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今昔物語集

巻16第19話 新羅后蒙国王咎得長谷観音助語 第十九

今昔、新羅の国に国王の后有けり。其の后き忍て窃に人に通じにけり。国王、此の事を聞て大に嗔て、后を捕へて、髪に縄を付け、間木(まぎ)に釣係て、足を四五尺許引上て置たりけり。

后、辛苦乱悩すと云へども、更に為べき方無くして、自ら心の内に思はく、「我れ、此く堪へ難き咎を蒙ると云へども、我れを助くべき人無し。而るに、伝へて聞けば、此の国より東に遥に去て、日の本と云ふ国有なり。其の国に長谷と云ふ所有けり。観音の霊験を施し給ふ、在ますと。菩薩の慈悲は、深き事、大海よりも深く、広き事、世界よりも広し。然れば、憑を係け奉らむ人、何でか其の助を蒙らざらむ」と祈請して、目を塞て思ひ入て有る間に、忽に足の下に金の榻(しぢ)出来ぬ。

然れば、后、「此れ、我が念じ奉れるに依て、観音の助け給ふ也」と思て、其の榻を踏へて立てるに、苦しぶ所無し。此の榻を人見る事無し。其の後、日来を経るに、后免されにけり。

后、偏に、「此れ長谷の観音の助ぞ」と知て、使を差して、多くの財物を持たしめて、日本に送て、長谷の観音に奉る。其の中に大きなる鈴・鏡・金の簾有り。于今、彼の山に納め置たり。

実に長谷の観音の霊験、不思議也。念じ奉る人、他国まで其の利益を蒙らずと云ふ事無し。人、専に歩を運び、首を低(かたぶけ)て礼拝し奉るべしとなむ、語り伝へたるとや。

text/k_konjaku/k_konjaku16-19.txt · 最終更新: 2015/12/06 18:31 by Satoshi Nakagawa
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