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今昔物語集

巻16第12話 観音為遁火難去堂給語 第十二

今昔、和泉の国和泉の郡の内に珍努の山寺と云ふ所有り。其の山寺に正観音の木像在ます。国郡の人、此の観音を崇め貴び奉る事限無し。

而る間、聖武天皇の御代に、彼の山寺に火出来て、其の観音の在ます堂焼ぬ。而るに、其の観音、其の焼たる堂より外に出でて、二丈を去て在ます。塵許損じ給ふ事無し。

皆、此れを見て、「奇異也」と思て、「此れは誰が取り出し奉りつるぞ」と尋ぬるに、取り出し奉れる人無し。其の時に、山寺の僧共、泣き悲むで、「此れ、観音の自ら火難を遁れむが為に堂を出給へる也けり」と、泣々く礼拝恭敬し奉つる。

実に此れを思ふに、菩薩は色にも現ぜず、心にも離れ、目にも見えず、香にも聞え給はずと云へども、衆生に信を発さしめむが為に、霊験を施し給ふ事、此の如くぞ在しける。

此れを見聞く人、首を低(かたぶ)けて、此の観音を恭敬し奉けりとなむ、語り伝へたるとや。

text/k_konjaku/k_konjaku16-12.txt · 最終更新: 2015/11/29 18:54 by Satoshi Nakagawa
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