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今昔物語集

巻15第53話 近江国坂田郡女往生語 第五十三

今昔、近江の国坂田の郡□□の郷に一人の女有けり。姓は息長の氏。心柔軟にして、因果を悟り、仏法を信じて、殊に道心有けり。日夜に極楽を願て、念仏を唱へけり。

而るに、其の国の内に筑摩と云ふ所有り。其の所に江有り。其の江に蓮花生たりけり。此の女、其の江に行て蓮花を取て、心を至して弥陀仏に供養して、「極楽に迎へ給へ」と懃ろに願けり。

此の如くして、既に数の年を経るに、遂に命終らむと為る時に臨て、紫雲西より聳き来て、家の内に涌き入て、女を纏て有ければ、現に此れを見る人多かりけり。而る間、女、紫雲に交り乍ら失にけり。此れを見聞く人、皆、「此の女、必ず極楽に往生せる人也」と知て、悲び貴びけり。

実に命終る時、紫雲来て、家の内に入りて、身を纏て失ぬれば、更に疑ふべきに非ず。「此れを聞かむ人、心を至して極楽を願ふべし」となむ語り伝へたるとや。

text/k_konjaku/k_konjaku15-53.txt · 最終更新: 2015/11/10 14:56 by Satoshi Nakagawa
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