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今昔物語集

巻15第52話 加賀国□□郡女往生語 第五十二

今昔、加賀国□□の郡□□の郷に一の女有けり。年来、人の妻として世路を営て有けるに、家大きに富て、財豊也けり。

而る間、其の夫死にけり。其の後、妻、寡にして、道心を発して、家に独り居たり。

而るに、其の家に小池有り。其の池の中に蓮花生たり。女、此の蓮花を見て、常に願ける様、「此の蓮花の盛に開けむ時に当て、我れ極楽に往生せむ便として、此の蓮花を以て贄として、弥陀仏を供養し奉らむ」と。蓮花を見る時毎に思て、蓮花の開くる時に成ぬれば、其れを取て、其の郡の内、諸の寺に持参て、仏に供養し奉けり。

而る間に、漸く年積て、此の女、老に臨て、身に病を受たり。此の時、此の蓮花の盛に開けたる時に当れり。然れば、女、病を受たる事を喜て云く、「我れ、年来の願の如く、此の蓮花の盛なる時に身に病を受たり。此れを以て思ふに、必ず極楽に往生すべき機縁有けり」と云て、忽に親き族・隣の人などを家に呼び集めて、飲食を与へ、酒を勧めて、告て云く、「我れ、今日此の界を去なむとす。年来の睦び、忘れ難し。対面せむ事、今日許也」と。親き族・隣人等、此れを聞て、哀れに貴く思ふ事限無し。

而る間、女、遂に終り貴くして失にけり。其の夜、其の小池の蓮花、皆悉く西に靡てぞ有ける。此れを見る人、、「此の女の往生する相也」と知て、皆涙を流してぞ貴びける。此れを聞き継て、傍の人、多く来て、見て礼拝してぞ返ける。

「此れ希有の事也」とて語り伝ふるを、聞き継て、此く語り伝へたるとや。

text/k_konjaku/k_konjaku15-52.txt · 最終更新: 2015/11/10 14:48 by Satoshi Nakagawa
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