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今昔物語集

巻15第34話 高階良臣依病出家往生語 第卅四

今昔、円融院の天皇の御代に、宮内の卿高階の良臣と云ふ人有けり。殊に身に才有て、文の道に達(いた)れり。若く盛也ける時は、公に仕りて、官爵思ひの如く也けり。齢漸く傾て後は、深く仏法を信じて、現世の名聞利養を棄て、後世の往生極楽の事を心懸て、昼夜寤寐に法花経を誦し、弥陀の念仏を唱へけり。

而る間、天元三年と云ふ年の正月の比より、身に病を受、悩み煩ふ間、弥よ経を誦し念仏を唱へて、怠る事無し。

而るに、其の病𡀍1)る事無くして、既に七月に成ぬるに、「明後日死なむ」とて、病宜く成ぬれば、家の内の妻子眷属も喜び合へる事限無し。

而る間、良臣、僧を請じて、髻を切て僧と成て、戒を受けり。其の後、三日を経て、病𡀍2)て心地宜しく成ぬれば、妻子眷属に向て、諸の事皆云ひ置て、五日と云ふに失にけり。

其の死ぬる時には、家の内に、俄に艶(えもいは)ず馥ばしき香満て、空の中に微妙の音楽聞えけり。亦、極熱の比にて、死人の身乱れて甚だ臭かるべきに、日来を経と云へども、身乱れずして、臭き気無かりけり。

此れを聞き見る人、「奇異也」と云ひ合て貴びけりとなむ、語り伝へたるとや。

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口へんに愈
text/k_konjaku/k_konjaku15-34.txt · 最終更新: 2015/11/01 19:08 by Satoshi Nakagawa
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