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今昔物語集

巻15第33話 源憩依病出家往生語 第卅三

今昔、源憩1)と云ふ人有けり。内匠の頭の適と云ける人の第七子也。幼きより、心、仏法の方に趣て、因果を知り、殊に慈悲有けり。亦、文書を学び読て、心に智り有けり。

而る間、憩、年廿余の程にして、身に病を受て、廿余日の間、悩み煩ひけるに、遂に世を厭ふ心深くして、忽に髻を切て出家してけり。其の後、偏に後世を恐れて、弥陀の念仏を唱へて、「極楽に往生せむ」と願ふ。

而る間、憩が兄に安法と云ふ僧有り。川原の院2)に住せり。憩入道、彼の安法を呼て、語て云く、「我れ、只今西方に微妙の音楽の音有りと聞く。君、此れを同じく聞や否や」と。安法、答て云く、「聞かず」と。入道云く、「亦、此に一の孔雀鳥来て、我が前に翔て舞ひ遊ぶ。亦、此れを見や否や」と。安法、「見ず」と答ふ。

而る間、入道、西に向て端坐して、掌を合せて失にけり。安法、此れを見て、涙を流て、泣き悲て貴びけり。此れを聞く人、亦貴ばずと云ふ事無し。

此れを思ふに、命終る時に臨て、耳に微妙の音楽の音を聞き、目に孔雀鳥来て舞ひ遊ぶを見る。況や、西に向て端坐合掌して失せぬれば、極楽に往生する事疑ひ無しとなむ、語り伝へたるとや。

1)
底本異体字「源憇」
2)
河原院
text/k_konjaku/k_konjaku15-33.txt · 最終更新: 2015/11/01 18:55 by Satoshi Nakagawa
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