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今昔物語集

巻15第25話 摂津国樹上人往生語 第廿五

今昔、摂津国島1)の郡の箕面の滝の下方に大なる松の木有り。木の下に一人の修行の僧、寄宿したりけるに、八月十五日の夜なれば、月極て明くして、天晴れて静なるに、忽に空に微妙の音楽の音、及び櫓の音有り。

而る間、此の木の上に音有て云く、「我れを迎へむが為に来り給へるか」。空の中に答て云く、「今夜は他の人を迎へむが為に、他所に行く也。汝をば、明年の今夜迎ふべき也」と云て、亦他の音無し。

而る間、音楽の音、漸く遠く成て、過ぎ去ぬ。其の時に、此の木の下に宿せる修行の僧、始めて此の木の上に人有けりと云ふ事を知ぬ。僧、木の上の人に問て云く、「此れ、何なる人の、此の木の上には在すぞ」と。木の上に答て云く、「此れ四十八大願の筏の音(お)と也」。

木の下の僧、此れを聞くと云へども、此の事を人に語らずして、明る年の八月の十五日に成ぬ。其の夜、窃に彼の木の下に行て、去年の言を信じて待つ間に、夜に至て、去年の如く、空に微妙の音楽の音有て、木の上の人を迎へて去にけり。

僧、此れを聞て語り伝ふるを、聞継て、此く語り伝へたるとや。

1)
底本頭注「島ハ豊島ノ誤カ」
text/k_konjaku/k_konjaku15-25.txt · 最終更新: 2015/10/25 21:46 by Satoshi Nakagawa
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