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今昔物語集

巻15第17話 法広寺僧平珍往生語 第十七

今昔、法広寺と云ふ寺有り。其の寺に、平珍と云ふ僧住けり。幼の時より修行を好て、常に山林に参て、至らざる霊験所無し。

此の如く修行して、年積て、平珍、老に臨て一の寺を起て住す。其の寺の中に、別に小さき堂を造て、極楽浄土の相を現じて、常に心を至して礼拝恭敬して、自ら思はく、「我れ、此の功徳に依て、命終らむ時に、形替らずして、極楽に往生せむ」と懃ろに願ひけり。

遂に命終らむと為る時に臨て、平珍、弟子共に、勤めて念仏三昧を修せしむ。而る間に1)、一人の弟子を呼て、告て云く、「我れ、只今空の中に音楽の音近く聞ゆ。定めて、此れ阿弥陀如来の我れを向へ給ふ相なめり」と云て、浄き衣を着て、西に向て端座して、掌を合て、念仏を唱へて失にけり。弟子等、此れを見て、泣々く貴び悲むで、弥よ念仏を唱へけり。

此れを聞く人、皆貴ばずと云ふ事無かりけりとなむ、語り伝へたるとや。

1)
底本「而るに間」。誤植とみて訂正。
text/k_konjaku/k_konjaku15-17.txt · 最終更新: 2015/10/13 12:23 by Satoshi Nakagawa
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