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今昔物語集

巻15第14話 醍醐観幸入寺往生語 第十四

今昔、醍醐に観幸入寺と云ふ僧有けり。幼にして仁海僧正と云ふ人を師として、真言の密法を受け学て後、行法を修して怠る事無かりけり。然れば、道の思え止事無くして、東寺の入寺僧に成にけり。

而る間、観幸、何なる縁にか有けむ、堅く道心発にければ、本寺を去て、忽に土佐国に行て、偏に名聞利養を棄てて聖人に成て、年来行ひけるに、或る時に、俄に観幸、弟子の僧に告て云く、「我れは明日の未時に死なむとす。汝等、諸共に、只今より明日の未時まで念仏を唱へて、音を断つ事無かれ」と云て、自ら沐浴して、浄き衣を着て、念仏を始め唱へて、終夜居たり。

夜曙て、既に午時に成る程に、観幸、持仏堂に入て、内着し籠て居ぬ。弟子、物の迫より臨(のぞ)きて見れば、仏の御前に端坐して行ひ居たり。良久く有るに、戸を叩て呼ぶと云へども、音も為ねば、戸を放ちて入て見るに、掌を合せて、端坐して死て有り。弟子等、此れを見て、泣々く悲び貴びて、弥よ念仏を唱へけり。其の辺の人、多く此の事を聞き継て、集り来て、礼み貴びけり。

「世の末にも、此る希有の事は有けり」とて、其れを見ける人の語り伝へたるを聞き継て、此く語り伝へたるとや。

text/k_konjaku/k_konjaku15-14.txt · 最終更新: 2015/10/04 18:13 by Satoshi Nakagawa
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