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今昔物語集

巻15第13話 石山僧真頼往生語 第十三

今昔、石山と云ふ所有り。東寺の流れとして真言を崇むる所也。其の寺に真頼と云ふ僧有けり。幼くして出家して、此の寺に住し、淳祐内供と云ふ人を師として、真言の密法を受け学て後、毎日三時に行法を修して、一時をも闕く事無かりけり。

此の如く勤め行ひて年来を経るに、真頼、老に臨て身に病有て、既に命終らむと為る日、弟子長教と云ふ僧を呼び寄せて、告て云く、「我れ、必ず今日死なむとす。而るに、汝ぢ、未だ受け学ばざる金剛界の印契・真言有り。其れ速に教ふべし」と云て、即ち授け畢ぬ。

其の後、沐浴して、弟子共に告て云く、「我れ、年来、此の寺に住て、既に死なむとす。今、此の寺の内を出て、山の辺に移なむと思ふ」と。弟子共、此れを聞て、師を惜むと云へども、「師の最後の言を違はじ」と思ふが故に、輿1)に乗せて、山に将行く。真頼、山に行て、即ち西に向て端坐して、掌を合せて、念仏を唱へて失にけり。弟子共、此れを見て、貴び悲ぶ事限無し。

其の後、同じ寺に真珠と云ふ僧有り。夢に、数の止事無き僧、并に多の天童来て、真頼を向へて西へ去ぬと見て、夢覚て後、寺の僧共に普く此の夢を語けり。此れを聞く人、皆、「真頼、必ず極楽に往生せる人也」と知て、貴びけりとなむ語り伝へたるとや。

1)
底本異体字「轝」
text/k_konjaku/k_konjaku15-13.txt · 最終更新: 2015/10/04 17:53 by Satoshi Nakagawa
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