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今昔物語集

巻14第36話 伴義通令誦方広経開聾語 第卅六

今昔、伴の義通と云ふ人有けり。身に重き病を受て、忽に二の耳聾(しひ)ぬ。亦、悪き瘡身に遍くして、年月を経と云へども、𡀍1)る事無し。

然れば、義通思はく、「此れ報には非じ。宿業の招く所ならむ。今生に亦善業を修せずば、後世の報亦此如くならむ。然れば、如かじ、善根を修して後世を祈らむ」と思て、忽に堂を荘(かざり)て、数(あまた)の僧を請じて、義通、先づ我が身を浄めむが為に、香水を浴て、「罪を滅す事、方広大乗経には過ぎじ」と思て、此の経を講ぜしむる間、義通、僧に申て云く、「我れ、只今、片耳に一の菩薩の御名を聞奉らる。願くは、恩を垂て哀び給へ」と云て、僧を礼拝するに、今片耳亦聞えぬ。然れば、義通、喜び貴て、弥よ心を至して方広経を講読せしむ。

此れを聞く人、亦遠く近く、貴ばざるは無かりけりとなむ語り伝へたるとや。

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口へんに愈
text/k_konjaku/k_konjaku14-36.txt · 最終更新: 2015/09/19 13:29 by Satoshi Nakagawa
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