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今昔物語集

巻14第32話 百済僧義覚誦心経施霊験語 第卅二

今昔、百済国より渡れる僧有けり。名をば義覚と云ふ。彼の国の破ける時、此の朝に渡て、難波の百済寺に住す。此の人、長高くして七尺也。広く仏教を学して悟り有けり。専に般若心経を読誦して、日夜に怠らず。

其の時に、同寺に一人の僧有て、夜半に房を出でて行くに、彼の義覚が所を見れば、光り有り。僧、此れを怪むで、窃に寄て室の内を伺ひ見るに、義覚、端坐して経を読誦す。口より光を出す。僧、此れを見て、驚き怪むで返ぬ。

明る日、寺の僧共に普く此の事を語る。寺の僧共、此れを聞て、貴び合へる事限無し。

而るに、義覚、弟子に語て云く、「我れ、一夜に心経を誦する1)事、一万返也。其れに、夜前(ようべ)心経を誦せる間、目を開て見るに、室の内の四方、光り曜く。我れ、『奇異也』と思て、室より出でて、廻て見るに、内に光り無し。返て見れば、都皆閉たり。此れ希有の事也」と。

定めて知ぬ、此れ只人に非ず。心経を誦する事、遂に怠らず。此れを見聞く人、般若心経の霊験を信じ、聖人の徳行を貴びけりとなむ語り伝へたるとや。

1)
底本「誦」空白。脱字と見て補う。
text/k_konjaku/k_konjaku14-32.txt · 最終更新: 2015/09/17 21:43 by Satoshi Nakagawa
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