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今昔物語集

巻14第22話 比叡山西塔僧春命読誦法花知前生語 第廿二

今昔、比叡の山の西塔に春命と云ふ僧有けり。幼にして山に登て、師に随て法花経を受習て、昼夜に読誦して、卒に他の勤め無し。昼るは房に居て、終日に法花を誦す。夜るは当山の釈迦堂に籠て誦す。其の身貧くして乏き事多しと云へども、偏に山に籠居て、里に出る事無し。

只、法花経を誦して年月を過る程に、夢に天女有て、身を半は現じて、今半は隠て、告て云く、「汝ぢ、前生に野干の身を受て、此の山の法花堂の天井の上に住して、常に法花経を聞奉り、法螺の音を聞きき。其の故に、今人の身と生れて、此く僧と成て法花経を読誦す。人の身受難し。仏法には値難し。弥よ励て、心を発して怠る事無かれ」と告ぐと見て、夢覚めぬ。

其の後、前生の果報を知て、因果の道を信ず。弥よ法花経を読誦する事、六万部也。其の後、多の年月誦すと云へども、巻数も計へず。

最後に病有りと云へども、重く煩はずして、法花を誦して、余の思ひ無くして失にけりとなむ、語り伝へたるとや。

text/k_konjaku/k_konjaku14-22.txt · 最終更新: 2015/09/08 14:01 by Satoshi Nakagawa
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