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今昔物語集

巻14第21話 比叡山横川永慶聖人誦法花知前世語 第廿一

今昔、比叡の横川に永慶聖人と云ふ僧有けり。覚超僧都の弟子也。幼にして山に登て、師に随て法花経を受習て、日夜に読誦す。後には、本山を去て、摂津の国の箕面の滝と云ふ所に籠て、法花経を誦して懃に行ふ。

而る間、永慶、夜る仏前にして経を誦して礼拝するに、傍に人有て寝たり。其の人、夢に老いたる狗、仏前に有て、音を高く吼て、立居に仏を礼拝すと見て、夢覚ぬ。即ち見れば、永慶、仏前に居て、音を挙て礼拝す。此の如く一両人、同く見て、永慶に語る。

永慶、此れを聞て、此の事を知らむが為に、七日食を断て、堂に籠て、「此の夢の告を知らしめ給へ」と祈請ふに、第七日の夜、夢に宿老の僧来て、告て云く、「汝が前生の身は、耳垂たる犬の身として有りき。其の狗、法花経の持者の房に有て、昼夜に法花を誦するを聞きき。其の力に依て、狗の報を転じて、人の身と生れて、僧と成て法花経を読誦す。但し、前生の気分にて、今有て、人の夢に狗の形にて見ゆる也。我れは此れ龍樹菩薩也」と宣ふと見て、夢覚ぬ。

其の後、深く前世の宿業を恥て、其の所を出でて、機縁有る所を尋て、跡を留めて、日夜に法花経を誦して、六根の罪障を懺悔す。「今生、法花読誦の功徳を以て、永く三途に返らずして、必ず浄土に生れむ」と願ひけりとなむ語り伝へたるとや。

text/k_konjaku/k_konjaku14-21.txt · 最終更新: 2015/09/08 13:50 by Satoshi Nakagawa
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