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今昔物語集

巻13第13話 出羽国龍花寺妙達和尚語 第十三

今昔、出羽の国に龍花寺と云ふ寺有り。其の寺に妙達和尚と云ふ僧住みけり。其の寺の和尚なるべし。身清くして心直し。亦、常に法花経を読誦して年を積(つめ)り。

而るに、天暦九年と云ふ年、身に病無くして、手に経を捲(にぎ)り乍ら俄に死ぬ。日次(ひなみ)宜しからざるに依て、弟子等、此れを忌て七日葬らず。七日と云ふに活(いきかへり)ぬ。弟子に告て云く、「我れ、死て閻魔王の宮に行き至る。王座より下り給て、我れを礼拝して告て宣はく、『命尽きざる者は此に来らず。汝ぢ未だ命尽きずと云へども、我れ汝を請ぜり。其の故は、汝ぢ偏に法花経を持(たもち)て、濁世に法を護る人と有り。此の故に、我れ汝に向て、日本国の中の衆生の善悪の所行を説聞かしめむ。汝ぢ、忘れずして、本国に返て、吉く善を勧め悪を止めて衆生を利益せよ』と宣て、返し遣(おこ)せるなり」と語る。此の事を聞く人、多く悪心を止めて、出家入道する者多かり。或は、仏像を造り経巻を写し、或は、塔婆を起て堂舎を造る者限無し。

和尚、生ける間、法花経を読誦する事、更に怠らず。遂に命終る時に臨て、手に香炉を取て、仏を廻り奉り、礼拝する事百八反、其の後、面を地に付て、掌を合せて失にけり。必ず極楽に生れたる人となむ語り伝へたるとや。

text/k_konjaku/k_konjaku13-13.txt · 最終更新: 2015/08/04 00:32 by Satoshi Nakagawa
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