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今昔物語集

巻1第30話 帝釈与修羅合戦語 第三十

今昔、帝釈の御妻は、舎脂夫人と云ふ。羅睺阿修羅王の娘也。父の阿修羅王、舎脂夫人を取むが為に、常に帝釈と合戦す。

或時に、帝釈、既に負て、返り給ふ時に、阿修羅王、追て行く。須弥山の北面より、帝釈、逃げ給ふ。其の道に多の蟻遥に這出たり。帝釈、其の蟻を見て云く、「我れ、今日、譬ひ阿修羅に負て罸(うた)るる事は有りとも、戒を破る事は非じ。我れ、尚を、逃て行かば、多の蟻は踏殺されなむとす。戒を破つるは、善所に生ぜず。何況や、仏道を成ずる事をや」と云て、返り給ふ。

其の時に、阿修羅王、責め来ると云ども、帝釈の返り給ふを見て、「軍を多く添て、又返て、我れを責め追也けり」と思て、逃げ返て、蓮の穴に籠ぬ。帝釈、負て逃げ給ひしかども、「蟻を殺さじ」と思ひ給ひし故に、勝て返り給ひにき。

されば、「戒を持(たも)つは、三悪道に落ちず、急難を遁るる道也」と仏の説き給ふ也けりとなむ、語り伝へたるとや。

text/k_konjaku/k_konjaku1-30.txt · 最終更新: 2016/05/03 00:48 by Satoshi Nakagawa
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