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text:ise:sag_ise044

伊勢物語

第44段 昔県へ行く人に馬のはなむけせんとて呼びて・・・

校訂本文

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昔、県(あがた)へ行く人に、「馬のはなむけせん」とて、呼びて、うとき人にしあらざりければ、家刀自(いへとうじ)、杯(さかづき)ささせて、女の装束(さうぞく)かづけんとす。主(あるじ)の男、歌に詠みて、裳(も)の腰に結ひ付けさす。

  出でて行く君がためにと脱ぎつればわれさへもなくなりぬべきかな

この歌は、あるが中におもしろければ、心とめて1)、詠ます2)、腹に味はひて。

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翻刻

むかしあかたへ行人にむまのはなむ
けせんとてよひてうとき人にしあらさり
けれはいゑとうしさか月ささせて女/s52l

https://kokusho.nijl.ac.jp/biblio/200024817/52?ln=ja

のさうそくかつけんとすあるしのおとこ
うたによみてものこしにゆひつけさす
  いててゆく君かためにとぬきつれは
  われさへもなくなりぬへきかな
この哥はあるかなかにおもしろけれは
心とめてよますはらにあちはひて/s53r

https://kokusho.nijl.ac.jp/biblio/200024817/53?ln=ja

1)
諸本「こころとどめて」
2)
「詠ます」は解釈が分かれるところ。「詠まず」として「朗詠しない」「(返歌を)詠まない」などの解釈もある。
text/ise/sag_ise044.txt · 最終更新: 2024/01/05 12:21 by Satoshi Nakagawa