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今物語
第46話 承久のころ住吉へしかるべき人の参らせ給ひけるに・・・
校訂本文
承久のころ、住吉へしかるべき人の参らせ給ひけるに、をりふし、神主経国、京へ出でたりけるが、人を走らせて、「住の江殿など、掃除せさせよ」と言ひ遣りたりけるに、あまりのきらめきに、年ごろしかるべき人々の書き置かれたる歌ども、柱・長押(なげし)・妻戸にありけるを、皆削り捨ててけり。
神主、下りてこれを見て、「こはいかにせむ」と、足摺りをして悲しめども、かひなかりけり。
これを見て、古き尼の書き付けける、
世の中の移りにければ住吉の昔の跡も留まらざりけり
これは、承久の乱の後、世の中改まりけるときのことなり。
翻刻
承久のころ住吉へしかるへき人のまいらせたまひけるにおり ふし神主経国京へ出たりけるか人をはしらせてすみの/s27l
江殿なと掃除せさせよといひやりたりけるにあまりの きらめきにとしころしかるへき人々の書をかれたる哥とも 柱なけし妻戸にありけるをみなけつりすててけり神主 くたりてこれをみてこはいかにせむとあしすりをして かなしめともかひなかりけりこれをみてふるきあま の書付ける 世中のうつりにけれは住よしのむかしの跡もとまらさりけり これは承久の乱の後世中あらたまりける時の事也/s28r
text/ima/s_ima046.txt · 最終更新: 2015/01/04 02:34 by Satoshi Nakagawa