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今物語
第42話 西行法師が陸奥国の方に修行しけるに千載集撰ばるると聞きて・・・
校訂本文
西行法師が、陸奥国(みちのくに)の方に修行しけるに、千載集撰ばるると聞きて、ゆかしさに、わざと上りけるに、知れる人、行き会ひにけり。この集のことども、尋ね聞きて、「我が詠みたる、
鴫たつ沢の秋の夕暮
といふ歌や入りたる」と尋ねけるに、「さもなし」と言ひければ、「さては上りて、何にかはせむ」とて、やがて帰りにけり。
翻刻
西行法師がみちのくにのかたに修行しけるに千載集 えらはるるとききてゆかしさにわさとのほりけるにしれる/s26r
人行あひにけりこの集の事とも尋ききて我よみたる 鴫たつ沢の秋の夕くれ といふ哥やいりたるとたつねけるにさもなしといひけれは さてはのほりてなににかはせむとてやかてかへりにけり/s26l
text/ima/s_ima042.txt · 最終更新: 2014/12/28 18:54 by Satoshi Nakagawa