text:kohon:kohon029
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目次
第29話 伊勢の御息所の事
伊勢御息所事
伊勢の御息所の事
校訂本文
今は昔、伊勢の御息所、七条の后宮に候給ひけるころ、枇杷の大納言の忍びて通ひ給ひけるに、女、いみじう忍ぶとすれど、みな人知りぬ。さるほどに忘れ給ひぬれば、
人知れずやみなましかばわびつつもなき名ぞとだに言はまし物を
と詠みて遣りたりければ、「あはれ」とやおぼしけむ、かへりて、いみじうおぼして住み給ひけり。
「ほにいでて人に」と詠みたるも、この大臣(おとど)におはす。
翻刻
いまはむかし伊勢のみやす所七条の后宮 に候給けるころひはの大納言のしのひてかよひ 給けるに女いみしうしのふとすれとみな人 しりぬさるほとにわすれ給ぬれは ひとしれすやみなましかはわひつつも なき名そとたにいはまし物を とよみてやりたりけれはあはれとやおほしけ むかへりていみしうおほしてすみ給けり ほにいてて人にとよみたるもこのおととに おはす/b100 e51
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