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text:kohon:kohon027

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第話

河原院事

河原院の事

校訂本文

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いまはむかしかはら院はとほるの左大臣のつく
りたりける家也。みちのくのしほかまのかた
をつくりてうしほの水をくみてたたえたり
さまさまをかしきことをつくしてすみ給/b77 e39
けるおととうせて後うたの院にはたて
まつりたる也たいこ御かとは御こにておはし
ましけれはたひたひ行幸ありけりまた
院のすませ給けるをりによなかはかりに西
のたいのぬりこめをあけてそよめきて
ひとのまいるやうにおほされけれはみさせ給へは
ひのしやうそくうるはしくしたるひとの
たちはきしやくとりて二けむはかりのきて
かしこまりてゐたるあれはたそととはせ
給へはここのぬしに候おきななりと申/b78 e40
とほるのおととかととはせ給へはしかに候と申
すそはなむそとおほせらるれは家なれはすみ
候におはしますかかたしけなくところ
せく候なりいかかつかまつるへからんと申せは
それはいとことやうの事なりこおととの子そ
むの我にとらせたれはすむにこそあれ我を
しとりてゐたらはこそあらめれいも
しらすいかにかくはうらむるそとたかやかに
おほせられけれはかいけつやうにうせぬその
をりのひとなをみかとはかたことにおはします/b79 e40
物也。たたひとはそのおととにあひてさやうに
すくよかにいひてむやとそいひけるかくて
院うせさせ給てのちすむ人もなくてあれゆ
きけるをつらゆきとさよりのほりてまいりて
みけるにあはれにおほえけれはひとりこち
ける
  君なくてけふりたらにししほかまの
  浦さひしくもみえわたるかな
そののちこの院を寺になしてあほうきみ
といふ人そすみける冬の夜つきあかかりける/b80 e41
になかめてよめる
  あまのはらそらさへさえやわたるらん
  こほりとみゆるふゆのよの月
むかしのまつのきの対のにしおもてに
おひたるをそのころ哥よみともあつまりて
あほうきみのはうにてよみけるこそへの入道
  としふれはかはらにまつはおひにけり
  ねの日しつへきねやのうへかな
  さとひとの(くむたにいまゝ本)てむたになかるへし
  いはゐのしみつくさおひにけり/b81 e41
   (た)          (みくさゐ)
                みちなりか哥
  ゆくすゑのしるしはかりにのこるへき
  まつさへいたくおひにけるかな
なむとなむいひけるそののちいよいよあれ
まさりて松の木もひととせの風にたふ
れにしかはあはれにこそ/b82 e42
text/kohon/kohon027.1400176287.txt.gz · 最終更新: 2014/05/16 02:51 by Satoshi Nakagawa