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宇治拾遺物語

第11話(巻1・第11話) 源大納言雅俊、一生不犯の金打せたる事

源大納言雅俊一生不犯金打セタル事

源大納言雅俊、一生不犯の金打せたる事

これも今は昔、京極の源大納言(雅俊)といふ人おはしけり。

仏事をせられけるに、仏前にて僧に鐘を打せて、一生不犯なるをえらびて、講をおこなはれけるに、ある僧の礼盤にのぼりて、すこしかほけしきた《が》ひたるやうに成て、鐘木をとりてふりまはして打もやらで、しばしばかりありければ、大納言「いかに」と思はれけるほどに、やや久しく物もいはでありければ、人ども覚つかなく思けるほどに、此僧わななきたる声にて「かはつるみはいかが候べき」と、いひたるに、諸人をとがひをはなちてわらひたるに、一人の侍ありて「かはつるみは、いくつ斗にてさぶらひしぞ」と問たるに、此僧くびをひねりて「きと夜部もしてさぶらひき」といふに、大かたとよみあへり。

其紛にはやう逃にけりとぞ。

text/yomeiuji/uji011.1411805901.txt.gz · 最終更新: 2014/09/27 17:18 by Satoshi Nakagawa