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蒙求和歌
第13第11話(191) 玄石沈湎
校訂本文
玄石沈湎
玄石、中山の酒家に行きて、酒を買ふに、酒家、千日酒を与へけり。飲みて酔(ゑ)ひ臥しぬ。
家人、このことを知らず、「死にたるぞ」と思ひて、泣く泣く棺(ひつぎ)に入れて、塚に埋(うづ)みてけり。
酒主(さけぬし)、「千日にもなりぬらむ」と数へて、価(あたひ)の銭(せに)を責めに来たれるに、「玄石、早く死ににき」といふ。酒主、塚を開けて見るに、すなはち酔ひ醒めて、棺の中より出でたり。やをら1)助けて、具して家に帰してけり。
家人、驚き怪しむといへども、酔ひ醒めと思ひ解きてけり。
時の人いはく、「玄石、酒を飲む。一酔して千日」と言へり。
苔の下沈む浮き名はふりにけりさてしも生ける命なれども
翻刻
玄石沈(チム)湎(メム) 〃〃中山ノ酒家ニユキテ酒ヲカフニ酒家/千日酒ヲアタヘケリノミテヱイフシヌ 家人コノ事ヲシラスシニタルソトヲモヒテナクナクヒツキニイ レテツカニウツミテケリサケヌシ千日ニモナリヌラムトカソヘテアタイノ/d2-34l
セニヲセメニキタレルニ玄石ハヤクシニニキトイフ酒主ツカヲアケテ ミルニスナハチヱイサメテヒツキノナカヨリイテタリヤヲタスケテ クシテ家ニカヘシテケリ家人ヲトロキアヤシムトイヘトモヱヒ サメトヲモヒトキテケリトキノ人云ク玄石酒ヲ飲(ノム)一酔テ千日ト云リ コケノシタシツムウキナハフリニケリ サテシモイケルイノチナレトモ/d2-35r
1)
「やをら」は底本「やを」。書陵部本「やはら」により「を」を補う。
text/mogyuwaka/ndl_mogyuwaka13-11.1520400951.txt.gz · 最終更新: 2018/03/07 14:35 by Satoshi Nakagawa