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text:mogyuwaka:ndl_mogyuwaka06-09

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蒙求和歌

第6第9話(99) 張氏銅鉤

校訂本文

張氏銅鉤

張氏が先祖、功曹、朝(あした)に起きて見れば、一つの鳩、承塵より飛び来たりて、几(おしまづき)の前にあり。

「この鳩、災ひをなすべくは、承塵に1)返り居るべし。喜びをなすべくは、わが懐(ふところ)に入れ」と言ひて、懐を開けたれば、前に鳩、すなはち飛び入りぬ。懐をさぐるに、一つの銅鉤を得たり。これを帯(おび)にして、朝に仕ふるに、数郡の守に至り。九卿につらなりにけり。

時に、蜀の客人2)来たりて、張氏がもとに使ふ女を語らひて、ひそかに銅釣を買ひ取りて、帰りにけり。蜀客、にはかにもの悪しくなりて、衰へにけり。怪しみ恐れて、銅釣を張氏に返してけり。

張氏、七世孫までに富み栄えけり。

  数ふればななよまでをぞ寝覚めける鳩吹く秋の3)行く末の空

翻刻

張氏銅鈎
張氏か先祖功曹あしたにをきてみれはひとつのはと承塵より
とひきたりて凡(をしまつき)のまへ(え歟)にありこの鳩(はと)わさわひをなすへくは承
塵よりかへりゐるへしよろこひをなすへくはわかふところにいれといひ
てふところをあけたれはまへに鳩すなはちとひいりぬふところを
さくるにひとつの銅釣をえたりこれををひにして朝につかふるに数郡の
守にいたり九卿につらなりにけり時に蜀の客人\/きたりて張
氏かもとにつかふ女をかたらひてひそかに銅釣をかひとり
てかへりにけり蜀客にはかにものあしくなりてをとろえにけり/d1-48l
あやしみをそれて銅釣を張氏にかへしてけり張氏七世孫まてに
とみさかへけり  かそふれはななよまてをそねさめけるはとふく□きの
                        ゆくすへのあき(そら)/d1-49r
1)
「承塵に」は底本「承塵ヨリ」。諸本により訂正。
2)
底本「客人」の下に踊り字。衍字とみて削除。
3)
「秋の」は底本「□キノ」で一字虫損。文脈により補う。
text/mogyuwaka/ndl_mogyuwaka06-09.1514002828.txt.gz · 最終更新: 2017/12/23 13:20 by Satoshi Nakagawa