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蒙求和歌
第5第10話(80) 飛燕体軽
校訂本文
飛燕体軽
趙の飛燕は、河陽公主の家にて、歌舞を習ひき。一度(ひとたび)奏で、一度歌ふに、あはれをもよほし、涙をもよほさずといふことなし。その体軽(かろ)くして、舞(まひ)の姿にたれるゆゑに「飛燕」と名付けけるなり。
歌舞の曲のみにあらず、見目・形・心ざま、たとへむ方(かた)なかりければ、おほやけ忍びて通ひ給ひけり。縫ひ物のかたらひ、をしのぶすま、亀の文(もん)の木枕(きまくら)あり。つひに后(きさき)に立ちにけり。
女弟あり。昭儀とす。見目・形、ほとど1)後宮を傾(かたぶ)くるほどなむありけり。
故郷(ふるさと)のねぐら出でけるほどもなく雲居はるかに飛ぶ燕(つばめ)かな
翻刻
飛鷰体(テイ)軽(ケイ) 趙(テウ)ノ飛鷰ハ河陽公主ノ家ニテ歌舞ヲナラヒキヒトタヒカ ナテヒトタヒウタウニアハレヲモヨヲシナミタヲモヨヲサストイフ コトナシソノ体カロクシテマヒノスカタニタレルユエニ飛鷰ト ナツケケルナリ歌舞ノ曲ノミニアラスミメカタチ心サマタトヘム カタナカリケレハヲホヤケシノヒテカヨヒタマヒケリヌヒモノノカ タラヒヲシノフスマ亀(カメ)ノ文(モン)ノキマクラアリツヒニキサキニタチ ニケリ女弟アリ昭(セウ)儀(キ)トスミメカタチホトヲト後宮(コウキウ/キサキ)ヲカ タフクルホトナムアリケリ フルサトノネクライテケルホトモナククモヒハルカニトフツハメカナ/d1-40
1)
「ほとど」は底本「ホトヲト」。書陵部本(桂宮本)により訂正。
text/mogyuwaka/ndl_mogyuwaka05-10.1511870799.txt.gz · 最終更新: 2017/11/28 21:06 by Satoshi Nakagawa