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第2話 公任大納言、屏風歌遅く進ずる事
公任大納言屏風哥遅進事
公任大納言、屏風歌遅く進ずる事
校訂本文
翻刻
いまはむかし女院はしめてうちへいらせおはし ましけるに御ひやう風ともをせさせ給て うたよみともによませさせ給けるに四月/b25 e12
ふちのはなおもしろくさきたりけるひらを 四条大納言あたりてよみ給けるにそのひになり て人々うたとももてまいりたりけるに大納言 をそくまいりけれは御使してをそきよしをた ひたひおほせられつかはす権大納言行成御ひやう風たま はりてかくへきよしなし給けれはいよいよたちゐ またせたまふほとにまいりたまへれは哥読とも はかはかしきとももえよみいてぬにさりともとた れも心にくかりけるに御前にまいりたまふ やをそきと殿ゝいかにそあのうたはをそしと/b26 e13
おほせられけれはさらにはかはかしくつかまつらす わろくてたてまつりたらんはまいらせぬにはおとり たる事なりうたよむともからのすくれたらん なかにはかはかしからぬうたかかれたらむなかきなにさ ふらふへしとやうにいみしくのかれ申し給へと殿ある へき事にもあらすこと人の哥なくても有なむ 御うたなくはおほ方しきしかたをかくましき事 なりなとまめやかにせめ申させたまへは大納言 いみしくさふらふわさかなこたみはたれもえよみえ ぬたひに侍めり中にも公任をこそさりともと/b27 e13
思ひたまひつるにきしのやなきといふ事を よみたれはいとことやうなる事なりかしこれら たにかくよみそこなへは公任はえよみ侍らぬもこと はりなれはゆるしたふへきなりとさまさまにのかれ申 給へと殿あやにくにせめさせ給へは大納言いみし く思ひわつらひてふところよりみちのくにかみに かきてたてまつりたまへはひろけてまへにおかせ たまふにそちとのよりはしめてそこらの上達 部殿上人心にくく思ひけれはさりともこの大納言 ゆえなくはよみ給はしと思ひつついつしか帥殿よみあ/b28 e14
け給へは むらさきのくもとそみゆるふちのはな いかなるやとのしるしなるらん とよみあけ給をききてなむほめののしりける 大納言も殿をはしめみな人いみしとおもふけし きをみ給ていまなむむねすこしおちゐ侍ぬ なと申したまひけるしらかはの家におはしける ころさるへき人々四五人許まうててはなの おもしろきみにまいりつる也といひけれはををみ きなとまいりてよみたまひける/b29 e14
はるきてそ人もとひけるやまさとは はなこそやとのあるしなりけれ ひとひとめててよみあひけれとなすらひなる なかりけり/b30 e15
text/kohon/kohon002.1399399370.txt.gz · 最終更新: 2014/05/07 03:02 by Satoshi Nakagawa