text:jikkinsho:s_jikkinsho07-22
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text:jikkinsho:s_jikkinsho07-22 [2016/02/11 15:26] – 作成 Satoshi Nakagawa | text:jikkinsho:s_jikkinsho07-22 [2019/11/10 21:14] (現在) – [校訂本文] Satoshi Nakagawa | ||
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夜に入りて、門を叩く者あり、「使庁の使ひなり」と言ふ。「その尼、多く盗犯の沙汰にかかりたるなり。許し出だすな」と言ひて帰りぬ。 | 夜に入りて、門を叩く者あり、「使庁の使ひなり」と言ふ。「その尼、多く盗犯の沙汰にかかりたるなり。許し出だすな」と言ひて帰りぬ。 | ||
- | これによりて、かの尼を縛りてあひ待つ((底本「待つ」なし。諸本により補入。))ほどに、夜更けて、判官殿といふ者来て、また門を叩く。「この尼を請ひ取むとするか」とて、入れて、隆禅みづから対面してけり。 | + | これによりて、かの尼を縛りてあひ待つ((底本「待つ」なし。諸本により補入。))ほどに、夜更けて、判官殿といふ者来て、また門を叩く。「この尼を請ひ取らむとするか」とて、入れて、隆禅みづから対面してけり。 |
- | ここに判官と名乗るもの、隆禅を捕らへて、刀を抜きて、脇にさし当てて、「なんぢ、もし動 | + | ここに判官と名乗るもの、隆禅を捕らへて、刀を抜きて、脇にさし当てて、「なんぢ、もし動きはたらかば、殺てん。坊中の人、声を出だすな」と言ひて、そのほどに、塗籠・倉などひき開けて、資財・雑物、若干運び取りて、馬十余疋に負はせて、尼公をも、隆禅をも、馬に乗せて、粟田山へゐて行きて、解き許す。さて、おのおの去りにけり。 |
- | きはたらかば、殺てん。坊中の人、声を出だすな」と言ひて、そのほどに、塗籠・倉などひき開けて、資財・雑物、若干運び取りて、馬十余疋に負はせて、尼公をも、隆禅をも、馬に乗せて、粟田山へゐて行きて、解き許す。さて、おのおの去りにけり。 | + | |
かの秦の始皇帝、高漸離に謀られて、剣にのぞめりけるは、燕の国の図にふけりて、みづから出であひ給へるゆゑなり。隆禅、無縁の尼をあはれぶ。慈悲の心を元として、かかる目にあひけるこそ、あさましけれ。 | かの秦の始皇帝、高漸離に謀られて、剣にのぞめりけるは、燕の国の図にふけりて、みづから出であひ給へるゆゑなり。隆禅、無縁の尼をあはれぶ。慈悲の心を元として、かかる目にあひけるこそ、あさましけれ。 | ||
- | これらのことまでも、よくく心すべきなり。 | + | これらのことまでも、よく心すべきなり。 |
===== 翻刻 ===== | ===== 翻刻 ===== | ||
- | 廿五隆禅律師按察大納言隆季の法事の導師にて、 | + | 廿五隆禅律師按察大納言隆季ノ法事ノ導師ニテ、 |
- | 坊にかへりたる夜部、尼一人来て大和国の人を尋ぬる/k144 | + | 坊ニカヘリタル夜部、尼一人来テ大和国ノ人ヲ尋ヌル/k144 |
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- | 入て門を叩く者あり、使庁使也と云、其尼おほく盗 | + | 入テ門ヲ叩ク者アリ、使庁使也ト云、其尼オホク盗 |
- | 犯の沙汰にかかりたるなり、ゆるし出すなと云て帰ぬ、 | + | 犯ノ沙汰ニカカリタルナリ、ユルシ出スナト云テ帰ヌ、 |
- | 是によりて彼尼をしはりて相程に、夜ふけて判官殿 | + | 是ニヨリテ彼尼ヲシハリテ相程ニ、夜フケテ判官殿 |
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- | 隆禅をとらへて、刀をぬきて脇にさしあてて、汝若動 | + | 隆禅ヲトラヘテ、刀ヲヌキテ脇ニサシアテテ、汝若動 |
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- | 程にぬりこめ倉なと引あけて、資財雑物若干運ひ | + | 程ニヌリコメ倉ナト引アケテ、資財雑物若干運ヒ |
- | 取て、馬十余疋に負せて、尼君をも隆禅をも馬に/k145 | + | 取テ、馬十余疋ニ負セテ、尼君ヲモ隆禅ヲモ馬ニ/k145 |
- | 乗て粟田山へゐて行て、ときゆるす、さて各去にけり、 | + | 乗テ粟田山ヘヰテ行テ、トキユルス、サテ各去ニケリ、 |
- | 彼秦始皇帝高漸離にはかられて釼にのそめりけ | + | 彼秦始皇帝高漸離ニハカラレテ釼ニノソメリケ |
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text/jikkinsho/s_jikkinsho07-22.txt · 最終更新: 2019/11/10 21:14 by Satoshi Nakagawa