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text:sesuisho:n_sesuisho5-043d [2022/03/22 18:33] – 作成 Satoshi Nakagawa | text:sesuisho:n_sesuisho5-043d [2022/03/22 19:01] (現在) – [翻刻] Satoshi Nakagawa | ||
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- | 俗云はく、「釈提桓因(しやくだいくわんゐん)((帝釈天))より苾蒭(ひつすう)((比丘))の種子を賜ふ。ただ、五道論の中の初めのみ。酒徳を軽んじ、誤つても愛好すること無き者は、却つて羨むに堪へたり。愚なるは恒に願の旨酒は置きて論ぜず、濁醪(どくらう)一樽を得れば、霜朝雪夜、寒を変じて温と為し、憂を転じて楽と為す。されば晋の賈謐(かひつ)と云ひしは、金谷園に於て二十四友を聚む。おのおの忘形の友と作(な)し、莫逆盟を結び遊ぶこと、良(まこと)に以(ゆゑ)有るなり。加之(しかのみならず)、詩を吟じ歌舞を作す、『如詩不成、罰依金谷酒数(もし詩成らずんば、罰は金谷の酒数にて依る)』と。文盞を以て三盃続け之を盛る。或は酒宴の席の詩に『不才身、野詩難詠。可愧罸觥((「觥」は底本「𦨻」))金谷籌。(不才の身は、野詩も詠じ難し。愧づべし罸觥(ばつくわう)金谷の籌(ちう))』と作るもまたこれを謂ふか。『人無更少時。須惜年不常春酒莫空。(人更に少き時無し、須く惜む年常に春ならず。酒空しうすることなかれ)』と、小野篁が作勢、最も感有るかな。 | + | 俗云はく、「釈提桓因(しやくだいくわんゐん)((帝釈天))より苾蒭(ひつすう)((比丘))の種子を賜ふ。ただ、五道論の中の初めのみ。酒徳を軽んじ、誤つても愛好すること無き者は、却つて羨むに堪へたり。愚なるは恒に願の旨酒は置きて論ぜず、濁醪(どくらう)一樽を得れば、霜朝雪夜、寒を変じて温と為し、憂を転じて楽と為す。されば晋の賈謐(かひつ)と云ひしは、金谷園に於て二十四友を聚む。おのおの忘形の友と作(な)し、莫逆盟を結び遊ぶこと、良(まこと)に以(ゆゑ)有るなり。加之(しかのみならず)、詩を吟じ歌舞を作す、『如詩不成、罰依金谷酒数(もし詩成らずんば、罰は金谷の酒数にて依る)』と。文盞を以て三盃続け之を盛る。或は酒宴の席の詩に『不才身、野詩難詠。可愧罸觥((「觥」は底本「𦨻」。舟偏に光。))金谷籌。(不才の身は、野詩も詠じ難し。愧づべし罸觥(ばつくわう)金谷の籌(ちう))』と作るもまたこれを謂ふか。『人無更少時。須惜年不常春酒莫空。(人更に少き時無し、須く惜む年常に春ならず。酒空しうすることなかれ)』と、小野篁が作勢、最も感有るかな。 |
また昔の人を思ひ寝の夢にも吟ずる詠歌あり。 | また昔の人を思ひ寝の夢にも吟ずる詠歌あり。 | ||
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酒ニ貪着モ右流左止俗云従釈提桓因賜苾蒭種子 | 酒ニ貪着モ右流左止俗云従釈提桓因賜苾蒭種子 | ||
- | 唯五道論之中の初め而已酒徳を軽んし誤ても無愛好者却堪たり | + | 唯五道論之中ノ初メ而已酒徳ヲ軽ンシ誤テモ無愛好者却堪タリ |
- | 羨むに愚也は恒願の旨酒は置て不論得れは濁醪一樽を霜朝雪 | + | 羨ムニ愚也ハ恒願ノ旨酒ハ置テ不論得レハ濁醪一樽ヲ霜朝雪 |
- | 夜変寒為温と転憂為楽去れは晋の賈謐と云しは於金谷園に | + | 夜変寒為温ト転憂為楽去レハ晋ノ賈謐ト云シハ於金谷園ニ |
- | 聚む廿四友を各作ら忘形友と結を莫逆盟遊ふ良有以也加之 | + | 聚ム廿四友ヲ各作ラ忘形友ト結ヲ莫逆盟遊フ良有以也加之 |
- | 吟詩作歌舞如詩不成罸依に金谷の酒数にて以文盞を三盃/n5-24l | + | 吟詩作歌舞如詩不成罸依ニ金谷ノ酒数ニテ以文盞ヲ三盃/n5-24l |
- | 続け盛る之或酒宴の席の詩不才身野詩も難詠可愧罸𦨻金 | + | 続ケ盛ル之或酒宴ノ席ノ詩不才身野詩モ難詠可愧罸𦨻金 |
- | 谷籌と作亦謂之乎人無更に少き時き須く惜年不常に春なら酒 | + | 谷籌ト作亦謂之乎人無更ニ少キ時キ須ク惜年不常ニ春ナラ酒 |
- | 莫れと空すること小野篁か作勢最有感哉又昔の人を思寝の夢にも吟する詠 | + | 莫レト空スルコト小野篁カ作勢最有感哉又昔ノ人ヲ思寝ノ夢ニモ吟スル詠 |
- | 歌あり酒瓶爾(さかがめに)我身遠(わかみを)入天(いれて)涵波耶(ひたすなみや)醤色仁志(ひしをいろにし)骨和(ほねか)成共 | + | 歌アリ酒瓶爾(サカガメニ)我身遠(ワカミヲ)入天(イレテ)涵波耶(ヒタスナミヤ)醤色仁志(ヒシヲイロニシ)骨和(ホネカ)成共 |
- | 夜光(よるひかる)玉登(たまと)云共(いふとも)酒飲天(さけのもて)酔鳴詮爾(ゑひなきするに)豈如免耶裳(あにまさるやみ) | + | 夜光(ヨルヒカル)玉登(タマト)云共(イフトモ)酒飲天(サケノモテ)酔鳴詮爾(ヱヒナキスルニ)豈如免耶裳(アニマサルヤミ) |
- | 各連(かくつら)ねたる両友一人開て瓊筵を坐花一人飛す羽觴酔月に | + | 各連(カクツラ)ネタル両友一人開テ瓊筵ヲ坐花一人飛ス羽觴酔月ニ |
- | 荘気空に聞し天乙女歟立舞袖に鸚鵡盃思方指したるを | + | 荘気空ニ聞シ天乙女歟立舞袖ニ鸚鵡盃思方指シタルヲ |
- | 飲て戻すや鸚鵡返し栄期か酒飲たらは三木とは不言大徳自今 | + | 飲テ戻スヤ鸚鵡返シ栄期カ酒飲タラハ三木トハ不言大徳自今 |
- | 已後酒廿充参れかし僧曰汝対持戒勤修の僧侶に頻に勧む/n5-25r | + | 已後酒廿充参レカシ僧曰汝対持戒勤修ノ僧侶ニ頻ニ勧ム/n5-25r |
text/sesuisho/n_sesuisho5-043d.1647941600.txt.gz · 最終更新: 2022/03/22 18:33 by Satoshi Nakagawa