大和物語
先帝1)の五の皇子2)の御むすめは、一条の君3)といひて、京極の御息所の御もとにさぶらひ給ひけり。
よくもあらぬことありて、まかで給ひて、壱岐(ゆき)の守の妻(め)にていますとて、
たまさかに問ふ人あらばわたのはら歎きほにあげて往ぬと答へよ
先帝の五の御この御むすめは一条の きみといひて京こくの宮す所の御 もとにさふらひたまひけりよくも/d20l
あらぬことありてまかてたまひてゆき のかみのめにていますとて たまさかにとふひとあらはわたの はらなけきほにあけていぬとこたえよ/d21r