徒然草
尊き聖(ひじり)の言ひ置けることを書き付けて、一言芳談とかや名付けたる草子を見侍りしに、心にあひて思えしことども。
このほかもありしことども、覚えず。
たうときひじりの。云置ける事を書付 て。一言芳談とかやなづけたる草子を 見侍しに。心にあひて覚えし事ども 一 しやせまし。せずやあらましと 思ふ事は。おほやうは。せぬはよき也 一 後世を思はん者は。糂汰瓶一ももつ まじきこと也。持経本尊にいたる まで。よき物をもつよしなき事也 一 遁世者はなきにことかけぬやうをは/w1-72r
からひて過る。最上のやうにて有也 一 上臈は下臈になり。智者は愚者 になり。徳人は貧に成。能ある人は 無能になるべき也 一 仏道をねがふといふは。別の事 なし。いとまある身になりて。世の 事を心にかけぬを第一の道とす 此外も有し事どもおぼえず/w1-72l
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