女、兄(せうと)のはかりたるとは知らで、「怪しう訪れぬ」と思ふ折、この兄、例のごとあるなり。「道合ひ人の、知りも知らぬ人に文(ふみ)通はし、懸想(けさう)じ給ふ人の御心にこそありけれ。かの人は御妻(め)にやがてあはせ奉らん。仲などこそよからめ。許され給ひては不用(ふよう)ぞ」など言ひければ、「なでふ目にかつかん。いかに知りてか、ともかうも思はん」。「世を知らざらん人は、さやうにも言はでこそあらめ。見つかずの有様や。心憂し。思はずなり」などいへば、妹(いもと)いとほしうて、「何か、目に付かざらん人を1)、しひも見給へと思はむ」とて入りにけり。
けり女せうとのはかりたるとは しらてあやしうをとつれぬと 思ふおりこのせうとれいのこと あるなり道あひ人のしりも/s13r
しらぬ人にふみかよはしけさうし 給人の御心にこそありけれかの人 は御めにやかてあはせたてまつらん なかなとこそよからめゆるされたまひて はふよふそなといひけれはなてふ めにかつかんいかにしりてかとも かうもおもはん世をしらさらん 人はさやうにもいはてこそあらめ みつかすのありさまや心うし おもはすなりなといへはいもといと/s13l
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おしうてなにかめに(虫損)かさらん人を しひもみたまへとおもはむとていりに けりれいのふみよみてないしに/s14r