醒睡笑 巻8 頓作
法華1)の沙門と時衆2)の法師と知音(ちいん)にて、とりどり参会ありしが、いかがはしたりけん、法華の沙門、「このごろ栗毛の馬をもとめたり。一段気に入りて、『時衆栗毛』と名を付けたは」。「何の子細に時衆は出でたぞ」。「とかくこの馬踊りたがる」。
すなはち時衆の法師、「われも四五日以前に葦毛の馬を買うたは。名をば『法華葦毛』と付けたよ」。「いかなれば法華とはいふ」。「とかくかの馬、口がこはさに」。
一 法花(ほつけ)の沙門(しやもん)と時衆(ちしう)の法師と知音(ちいん)にてとりとり 参会ありしがいかがはしたりけん法花の 沙門此比栗毛の馬をもとめたり一段気に/n8-10r
入て時衆くりげと名をつけたは何の子細に 時衆は出たぞとかく此馬おとりたがるすなはち 時衆の法師我も四五日已前に葦毛(あしけ)の馬を かうたは名をは法花葦毛とつけたよいか なれは法花とはいふとかく彼(かの)馬口がこはさに/n8-10l