醒睡笑 巻7 思の色を外にいふ
連歌に身をやつし、心を染め、臥すにも起くるにも、このことのみなりつる人の栖(すみか)なる軒の下に、夜、小便する音しけり。かの亭主、とがめて言へるやう、「夜分に居所(きよしよ)へ来たつて、水辺(すゐへん)を下すは、人倫(じんりん)か生類(しやうるゐ)か。植物(うゑもの)をもつて打擲(ちやうちやく)せよ」。
一 連歌に身をやつし心をそめ臥(ふす)にもおく るにも此事のみなりつる人の栖(すみか)なる軒の下 に夜小便(せうへん)する音(をと)しけり彼亭主(ていしゆ)とか めていへるやう夜分(やぶん)に居所(きよしよ)へきたつて 水辺(すいへん)をくだすは人倫(しんりん)か生類(しやうるい)か植(うへ)物をもつ て打擲(ちやうちやく)せよ/n7-12r