醒睡笑 巻7 思の色を外にいふ
堺に、智永とて比丘尼あり。ある朝、松茸の物見なるを一折、人のもとより送りたるが、勤行(ごんぎやう)より帰り、見て、「珍しや」と喜べり。下女の出でて、「そこにあれば蠅もせせるに、取りて置き給へ」といふ時、「いまいましや。看経(かんきん)した手で取らうかな」と。
一 堺に智永とて比丘尼ありある朝松茸の 物見なるを一折人のもとより送りたる/n7-9l
が勤行(ごんきやう)より帰り見てめつらしやとよろこへ り下女の出てそこにあれは蠅もせせるに とりてをきたまへといふ時いまいましやかん きんした手てとらふかなと/n7-10r