醒睡笑 巻6 推はちがうた
久我縄手(こはなはて)を、葦毛馬・鹿毛・河原毛の三疋に荷を負ほせて行くに、宗長、次や先と歩まれし。馬追ふ者の言ひけるは、「お坊主、何か知り給ひたる」。「歌道に心掛くる」よしあれば、「その儀ならば、この馬三疋を、おもしろう歌に詠まれよかし」。
雨降れば道あしげなる久我縄手日影にさらば末はかはらけ
一 久我縄手を葦毛馬鹿毛河原毛の三疋に/n6-42r
荷を負せて行に宗長次や先とあゆまれし 馬追者のいひけるはお坊主なにかしり給ひ たる歌道に心かくるよしあれは其儀ならは 此馬三疋をおもしろう哥によまれよかし 雨ふれは道あしけなる久我縄手 日影にさらは末はかはらけ/n6-42l