醒睡笑 巻6 恋のみち
夜半のころ、隣にいさかふ声しけり。「何事にや」と、夫婦(めをと)ながら起きて聞きゐたれば、男のいたづらなるにより、おこりたる悋気(りんき)いさかひ1)の、修羅を立つるなり。
聞きゐたる女房、何の理も非もなく、夫の頭(あたま)を続け張りに張りけり。夫、「これは何といふ狂乱ぞ」と言へば、「この後も、あの隣のいたづら男のやうに身を持つなといふことよ」。
迷惑の。2)
一 夜半の比となりにいさかふ声しけりなに事にや とめをとなから起て聞ゐたれは男の徒なる/n6-35l
によりおこりたるりんきかさかひの修羅を たづるなり聞ゐたる女房なにの理も非も なく夫のあたまをつつけばりにはりけり夫こ れはなんといふ狂乱そといへは此後もあのとなり のいたづら男のやうに身をもつなといふ事よ 迷惑の/n6-36r