醒睡笑 巻5 上戸
小機嫌のよき折節、懺悔物語(さんげものがたり)をしけるが、一人言ふやう、「この五体を作る神にても仏にてもあれ、あつらへたいことがあるは」。「何たる望みぞや」。「さればよ、上々の酒を飲む時、しづかに噛み砕き吟味せんとたくめど、いかにも口へ入れば、そのまま喉へざうさもなく走りこむ。あまりに残り多し。鶴類(つるるい)のやうに作りて持ちたい」と。
一 小機嫌(きげん)のよき折節さんげ物がたりをしける がひとりいふやう此五体をつくる神にても仏 にてもあれあつらへたい事があるはなにたる 望(のそみ)そやさればよ上々の酒をのむ時しづかに かみくたき吟味せんとたくめどいかにも 口へいればそのままのどへさうさもなくはしり こむあまりに残多し鶴類(つるるい)のやうに つくりてもちたいと/n5-45l