醒睡笑 巻5 上戸
酒に酔(ゑ)ひて帰り、寝(い)ねたる体、敷居に肩を置き、頭(あたま)を下に下げたり。才覚なる子が見付け「さて、血が下がらんものを」と思ひ、枕を取り寄せ、頭(かしら)1)をあげ、よきに直し置きたれば、目を覚まし、「これは何もののしけるぞや。身の内大略は酔うたれども、頭がいまだ酔はぬほどに、酒をよくめぐらさんと、わざと枕下がりに寝てゐるものを」と叱りけり。
一 酒にゑひて返りいねたるてい敷居に肩を置 あたまを下にさげたり才覚なる子が見つけ さて血がさがらん物をとおもひ枕をとりよせかしら/n5-43l